女子大生のプロジェクトマネジメント学習のサポートから得た学びとは ~U-16プログラミングコンテスト石狩模擬大会プロジェクトを通じて~

2021年2月1日

 2020年10月18日(日)に『U-16プログラミングコンテスト石狩模擬大会』を開催しました。このコンテストには、大きく分けると2つの目的がありました。

  1. 石狩市で3年間にわたるプログラミング教育支援を実践してきたさくらインターネットが、地域にプログラミング教育を根付かせるための場作り
  2. 藤女子大学人間生活学部人間生活学科のプロジェクトマネジメントII (3年生)の授業協力

 

 小学校で2020年から始まったばかりのプログラミング教育では、SDGsの目標の1つである「質の高い教育をみんなに」を達成するためのハードルがまだまだ高い状況にあり、特に広大な北海道では難しい課題に直面しています。
 このプロジェクト活動を通してその実情を知った学生が、プロジェクトから何を学んだのか、そして企業のCSR活動にどんな価値を見出すのか、私たちさくらインターネット社員が学生と共に学んだことは何だったのか、U-16プログラミングコンテスト模擬大会実施までの過程と共に振り返り、このプロジェクトを主導したさくらインターネットの朝倉がレポートします。

SDGsの17の目標。4に「質の高い教育をみんなに」の目標が掲げられている。
石狩の子どもたちは、ジェンダーや住んでいる場所に因らず質の高い教育に平等なアクセスができているだろうか。

※藤女子大学人間生活学部人間生活学科のカリキュラム詳細につきましては、大学の公式Webサイトをご覧ください。

藤女子大学との交流のきっかけ

 さくらインターネットの「さくらの学校支援プロジェクト」では、2017年から石狩市内の小学校を中心としたプログラミング教育支援を実施してきました。
 筆者が藤女子短期大学保育科を卒業していたというご縁や、藤女子大学人間生活学部の女性リーダーシップ論のゲスト講師に招かれたことなどをきっかけに、今回の授業協力に向けた調整がスタートします。

 藤女子大学で学べるプロジェクトマネジメントは、企業で活躍する専門職としてのプロジェクトマネージャーを育成する職業訓練といった位置付けではなく、人生の様々な場面で出会う課題を、前向きに解決していける人材へと成長するために必要な「プロジェクトマネジメント力」を、実践を通じて段階的に身につけていくといった内容です。
 将来どんな職業に就こうとも必要となる考え方、全ての学習の基礎となる力としてプログラミング的思考を学ぶという小学校の学習指導要領とも共通性があると感じ、石狩のプログラミング教育を根付かせるためにぜひ協力していきたいと感じました。

 藤女子大学とさくらインターネットは2020年5月に授業協力に対する協定を締結し、学生と社員が協力しながらプログラミングコンテストを企画・実施するプロジェクトを立ち上げました。

プロジェクトの概要

 U-16プログラミングコンテスト石狩大会は、さくらインターネットが主催、藤女子大学人間生活学部人間生活学科の共催という形で、企画段階から実行委員会を通じ両者が協力する体制としました。
 実行委員会の中に3つの役割を設け、それぞれの役割に対しさくら社員が1名ずつ担当、責任を持ち学生を主導するという体制です。

  • プロジェクトマネジメントチーム(PMチーム)
    • プロジェクト全体のタスク管理、スケジュール管理
    • コミュニケーションの中心となり、業務の推進を図る
    • 問題発生時の方針決定
  • 当日運営チーム(OPチーム)
    • 集客用チラシ製作
    • 当日のプログラム検討
    • 当日の司会進行の段取り検討
  • PRチーム
    • 集客用動画製作
    • SNSを通じたPR

 プロジェクトは2020年5月18日のプロジェクトマネジメントIIの授業での概要説明からスタート、10月18日の模擬大会当日を経て、11月19日に発信したTwitterでの大会報告をもって活動を終了しました。
 また、終了したプロジェクト活動を振り返り、12月7日には学科内での成果発表会が開かれました。

 U-16プログラミングコンテストに関する情報は、Webサイトにまとめられていますので、ぜひご覧ください。

U-16プログラミングコンテスト石狩大会Webサイト

プロジェクトの推進と学生の変化

 藤女子大学では、前期の授業が全面オンラインに移行となりましたが、プロジェクトの推進はZoomとSlackを使ったコミュニケーションを中心に進められました。
 模擬大会当日まで、プロジェクトメンバー全員がオンサイトで集合する機会はなく、学生に戸惑いの声もありましたが、PMチームで学生の意向や意見を拾い上げてもらいながら会議の間隔調整やタスクの進捗確認などを行っていきました。

5月18日に開催された、プロジェクトマネジメントII 授業でのプロジェクトキックオフの様子

 IT企業との協働プロジェクトですので、IT企業の文化に少し触れてもらうことも学びの一環と考え、敢えて私たちが普段使っているツールを使ってのコミュニケーションを試みました。

 Zoomを使った授業はすでに始まっていましたし、LINE等のチャットツールは普段から使い慣れているため、ZoomやSlackなどのツールの操作方法に対する質問はほぼなく、全員がすんなり使い始められることがわかりました。
 ただ、特にSlackでのやり取りに対する学生の戸惑いは大きく、最初の頃は呼び掛けてもリアクションが全くない…という状況でした。
 Slackでの情報のやり取りに対するルールを明確にしたり(毎日確認する、問いかけにはスタンプで良いので必ず意思表示をするなど)、PMチームの学生がグループLINEで別途声をかけたりなどしながら、少しずつ慣れていきました。
 定例ミーティングを重ねるごとに、タイムラインに議事録を流したり、チラシ案の人気投票を実施するなど、少しずつ業務を進めるためにSlackを利用する姿が見られるようになっていきました。

全くリアクションもコメントもつかないプロジェクト開始直後のSlackでのやり取り

 定例ミーティングは、スタート直後から7月中旬までは筆者が主導、その後はPMチームの学生が主導する流れに切り替えていきました。PMチームの学生が、次のミーティングの議題を検討し、学生に事前に準備すべきことを伝え、当日の進行を行います。
 また、8月には学生側から提案があり、大学の夏休みや就職活動の都合で、8月~9月の定例ミーティングを毎週から隔週に変更することとなりました。
 この頃には、全員が同じ日時にそろってZoomで打ち合わせをすることの調整の困難さと、Slackでほとんどの情報共有は可能になっているという状況を総合的に判断して、学生が主体的にミーティングの頻度を検討できるようになっていました。

 夏休みや就職活動で、学生がこのプロジェクトに使える時間的な制約が出てきたというのは一つの「課題」ですが、自分たちでそれを乗り越える方法を考え、プロジェクト活動を続行できたことは、学生の学びの一つだったのではないかと思います。

学生がプログラミングで初めての作品を作る!模擬大会を通して見えた学生の学びとは

 定例ミーティングを隔週に切り替えた頃から、タスクの進捗がはかばかしくなくなり、対面でのコミュニケーションが減ったこの期間に、プロジェクトやコンテストに対するモチベーションが明らかに落ちてきていたことを感じていました。
 そこで、PMチームに声をかけ、プロジェクト参加学生へのプログラミング体験を実施することにしました。プログラミングの楽しさを伝え、コンテストに対象年齢の子どもたちを誘導するためには、自分たちがプログラミングの楽しさを知らない状態ではできないはずです。

 筆者が講師となってオンラインで実施した1回目のScratch体験会と、そこに参加できなかった学生や教授を対象とし、1回目に参加した学生が講師をつとめる2回目のScratch体験会が開かれ、学生自身がプログラミングを初体験。
 参加者は、終始真顔になるほど夢中で考え、画面の向こうで自分なりの試行錯誤を繰り返していたとのこと。

 コロナ禍でのオンライン開催によるコンテストの募集は難しく、結果として「模擬大会」という形になりましたが、学生の初めてのプログラミング体験が作品の発表につながり、参加者・運営者・審査員と、コンテストを構成する様々な立場の目線で客観的に捉えることができたことは、「コンテストをなぜ実施するのか」「コンテストの意味とは何か」を深く考えるきっかけとなったのではないかと思います。

 また、学生は全員が2週間ほどで作品作りを完了し、しかもどれも個性のある面白い作品であったことにうれしい驚きがありました。

 コンテストの模様や、応募作品については、大会レポートをぜひご覧ください。

 学生たちからは「今自分の持てる力を残さず発揮した!」という意見や、「作っているうちにいろいろアイディアが浮かんで、もっといろんなことをしてみたかった」「思ったよりも楽しくてはまった」という意見など、とてもポジティブな感想がたくさん聞かれました。

Scratchのチュートリアルを利用した簡単な作品だが、絵のかわいらしさとカエルの鳴き声で学生たちが自然と笑顔に。

 また、「どうしても作ってみたい作品があったが、提出期限の都合で別の作品を提出した。でもあきらめきれなくて最後まで作ってみた。」という学生が、参考作品として完成した作品を披露してくれました。
 この「最後まであきらめずに取り組む姿勢」や、「がんばって作った作品を発表したいという想い」は、プログラミングコンテストを通じて子どもたちから引き出したい学びに向かう力であり、模擬大会を通じて学生がそのことに気付いてくれたことは、非常に良い学びの機会であったと感じています。

学生とさくら社員が学んだ「プロジェクトマネジメント」「企業のCSR」とは?

 12月7日(月)に、プロジェクトマネジメントIIの成果発表会が行われました。
 成果発表会は、我々のプロジェクトである企業チームの他に、NPO、行政(石狩市役所)とのプロジェクトに参画した複数のチームからの成果の報告(または中間発表)がありました。
 この成果発表会についての詳細は、成果発表会レポートをご覧ください。

 これら一連の授業協力では、当初プロジェクトマネジメントの実践的な経験を学生にしてもらい、企業側が社会人として経験を伝える場として捉えていたのですが、プログラミングコンテストの在り方や、企業のCSRとは何かということを、学生と共に深く考える機会となり、私たちにとっても学びの場となりました。
 就職活動で学生が企業を選ぶ時、消費者として企業を選ぶ時、社会的責任をしっかり果たしている企業を選ぶことで、社会課題の解決にも向かっていくのではないかという学生のプレゼンに、気持ちが一層引き締まりました。

 また、行政やNPOによる社会貢献や公的な利益に対する働きと、営利目的である企業が実施するCSRとの役割の違いを認識し、特に社会課題解決に意欲を持つ学生や若い社員が、キャリアに対する自分自身の目的を見失わないような選択ができるよう、企業も学びを支える必要性を感じました。

 藤女子大学以外でも、大学と企業との連携は増えていますが、多くは目標がはっきりした協働研究、共同開発が主体で、企業側はノウハウを学生に伝える立場での関わりだと思います。
 今回のプロジェクトは、さくらインターネットとしても初めての試みである地域のプログラミングコンテスト主催を通じて、コンテスト参加者がゼロという大きな挫折を共に経験することとなりました。
 成果発表会で学生からは、コロナ禍で対面の授業がほとんどない状況の中、最終的にこのプロジェクトを通じて仲間との一体感を強く感じられたという振り返りがありましたが、企業先導で、予定されたタスクを教えられた通りに実施し、予定された成果を上げることよりも、失敗を通じた試行錯誤がもたらす学びの深さを私たちも実感しました。

 企業規模に関わらずもっと身近な地域の企業が大学との共同プロジェクトに積極的に参加し、企業もノウハウを持たない大きな課題に一緒に挑むことは、お互いに学びが多くメリットのあることではないでしょうか。
 そのような企業と大学との関わりは、学生のキャリアに対する考え方がより深まり、そうした学びを得た学生が地域で活躍することで、企業や地域社会への学びの還元が期待できるのではないかと思います。

企業チームによる成果発表会プレゼン資料より

 そして、企業のCSRでできることや、1つの企業だけでできることには限界があることにも目を向けてもらい、「石狩にプログラミング教育を根付かせる」という目標を持続可能な活動にしていくためにこれからどうしていけば良いのか、今後の学生の研究や考察に期待しつつ、私たちも引き続き考えていきたいと思います。

 プロジェクトに参加してくださった学生の皆さんが、この学びを活かして生き生きとした社会人として羽ばたいていくよう、これからも応援しています。

さくらインターネット株式会社
さくらの学校支援プロジェクト 朝倉

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