さくらインターネット研究所、 国際会議「IEEE COMPSAC 2020」で2本の論文が採択

2020年7月28日
  • さくらインターネット株式会社

 インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:田中 邦裕)の組織内研究所であるさくらインターネット研究所に所属する研究員の論文が、IEEEによるコンピューターソフトウェア分野の主要な国際会議「IEEE COMPSAC 2020」に併催されるワークショップ「AIOT 2020: The 1st IEEE International Workshop on Advanced IoT Computing(以下、AIOT 2020)」と、「STPSA 2020: The 15th IEEE International Workshop on Security, Trust & Privacy for Software Applications(以下、STPSA 2020)」において採択されました。

採択された論文は以下の2本です。どちらの論文もより快適・安全にインターネットインフラを利用するために有用な技術に関する内容となっております。

Transtracer: 分散システムにおけるTCP/UDP通信の終端点の監視によるプロセス間依存関係の自動追跡

 Linuxのネットワークソケットに含まれる接続情報を監視することにより、分散アプリケーションにおける未知のプロセス間の依存関係を網羅的に追跡可能なアーキテクチャを提案するものです。本提案により、システム管理者は動的に変更されるシステムの構成を常に把握できます。

 本論文は、実際のプロトタイプのシステムを実装ができているという所が高く評価され採択にいたりました。

sshr: ユーザに変更を要求せずにシステム変化に追従可能なSSHプロキシサーバ

 システム管理者が自由に組み込み可能なフック関数を用いてシステム変化に追従できるSSHプロキシサーバーを提案するものです。本提案により、SSHのクライアントは、システムの構成情報やその変更を意識することなく、透過的に目的のサーバーにSSH接続が可能になります。

 本論文は、sshrというソフトウェアのシンプルかつ直感的な実装とサーバー管理に対する実用性が評価され採択にいたりました。

 

 さくらインターネット研究所では、今後も社会にとって有用で新しいインターネットインフラを実現するための研究開発に努めてまいります。

 

採択された論文について

AIOT 2020採択論文

タイトル

『Transtracer: Socket-Based Tracing of Network Dependencies among Processes in Distributed Applications』Yuuki Tsubouchi(SAKURA internet Inc.), Masahiro Furukawa(Hatena Co., Ltd), Ryosuke Matsumoto(SAKURA internet Inc.)

(和訳)

『Transtracer: 分散システムにおけるTCP/UDP通信の終端点の監視によるプロセス間依存関係の自動追跡』坪内 佑樹(さくらインターネット株式会社)、古川 雅大(株式会社はてな)、松本 亮介(さくらインターネット株式会社)

論文(カメラレディ版)

https://yuuk.io/papers/transtracer_compsac2020.pdf

概要

Webサービスの利用者による多様な要求に応えるために、Webサービスを構成する分散システムが複雑化しています。その結果、システム管理者が分散システム内のプロセス間の依存関係を把握することが難しくなっています。そのような状況では、システムを変更するときに、変更の影響範囲を特定できず、想定よりも大きな障害につながることがあります。そこで、システム管理者にとって未知のプロセス間の依存関係を自動で追跡することが重要です。先行手法は、ネットワーク接続を終端するホスト上でLinuxのパケットフィルタを利用してトランスポート接続を検知することにより依存関係を発見します。しかし、Linuxカーネル内のパケット処理に追加の処理を加えることになるため、アプリケーションの通信に追加の遅延を与えることになります。そこで、本論文では、サーバー用途で広く利用されているLinuxを前提に、TCP/UDP接続の終端点であるネットワークソケットに含まれる接続情報を監視することにより、未知のプロセス間の依存関係を網羅的に追跡可能なアーキテクチャを提案します。このアーキテクチャにより、プロセスがLinuxカーネルのTCP/UDP通信機構を利用する限り、未知のプロセスの依存を見逃さずに追跡できます。また、接続情報の監視処理は、ソケットがすでに保持する接続情報を読み取るだけとなり、アプリケーションの通信処理とは独立するため、アプリケーションの通信遅延に影響を与えません。最後に、先行手法との比較実験を行い、応答遅延オーバーヘッドとリソース負荷を評価した結果、応答遅延オーバーヘッドを13-20%、リソース負荷を43.5%低減させていることを確認しました。

STPSA 2020採択論文

タイトル

『sshr: An SSH Proxy Server Responsive to System Changes without Forcing Clients to Change』Hirofumi Tsuruta(SAKURA internet Inc.), Ryosuke Matsumoto(SAKURA internet Inc.)

(和訳)
『sshr: ユーザに変更を要求せずにシステム変化に追従可能なSSHプロキシサーバ』鶴田 博文(さくらインターネット株式会社)、松本 亮介(さくらインターネット株式会社)

論文(カメラレディ版)

https://research.sakura.ad.jp/wp-content/uploads/2020/07/compsac2020-hi-tsuruta-proceeding-sshr.pdf

概要

Webサービスを支えるインフラは、ユーザーからの多様な要求に応えるために、ユーザーにシステムの構成情報やその変更を意識させることなく、迅速かつ柔軟にシステム構成を変更することが求められます。一方、サーバーへのリモート接続サービスとして利用されているSSHでは、ユーザーが利用するサーバーのIPアドレスまたはホスト名を指定して接続要求を送るため、サーバーのIPアドレスまたはホスト名に変更があった場合、ユーザーは変更後の情報を知る必要があります。この問題を解決するために、gcloudコマンドのようなクライアントツールがサーバーごとの一意のラベル情報をもとに接続先のIPアドレス等を取得する手法がありますが、この手法ではユーザーに用いるツールの制限や変更を要求します。別の手法として、SSH Piperのようなプロキシサーバーがユーザー名をもとに接続先のIPアドレス等取得する手法がありますが、既存のプロキシサーバーではその動作を変更するためにはソースコードを直接変更しなければなりません。本論文では、ユーザーに用いるクライアントツールの制限や変更を要求せず、システム管理者が組み込み可能なフック関数を用いてシステム変化に追従できるSSHプロキシサーバーを提案します。提案手法は、組み込むフック関数のみの修正でプロキシサーバーの動作を自由に変えられるため、システムの仕様変更に対して高い拡張性を有しています。さらに実験から、提案手法を導入した場合のSSHセッション確立のオーバーヘッドは20ミリ秒程度であり、ユーザーがサーバーにSSHログインする際に遅延を感じないほど短い時間であることを確認しました。

当社所属の論文著者プロフィール

■坪内 佑樹(つぼうち ゆうき)さくらインターネット研究所 研究員

2019年2月入社。Site Reliability Engineering(SRE)、Data-Intensive Applicationsに関する研究開発を担当。
2013年12月より株式会社はてなのWebオペレーションエンジニアおよびSREとして従事しつつ、業務の傍らで論文執筆。技術を使うことに加えて、技術を創ることを志し、技術者から研究者へ転向。
技術者としては、YAPC::Asia 2013/2015、AWS Summit 2017などの登壇多数、学術研究の場では、情報処理学会IPSJ-ONE 2017にて情報科学分野で活躍する若手研究者として技術者ながら選出される。

■鶴田 博文(つるた ひろふみ)さくらインターネット研究所 研究員

インフラ領域における機械学習の活用に関する研究を担当。元消防士という異色の経歴を持つ。学生時代は材料工学を専攻し、高分子材料の物性に関する研究に従事。修士号を早期修了した後、博士課程に進学するも中退し、消防士になる。2016年11月にIT業界に飛び込み、機械学習エンジニア、インフラエンジニアを経て、2019年8月より現職。

■松本 亮介(まつもと りょうすけ)さくらインターネット研究所 上級研究員

2008年、ホスティング系企業に就職したのち、2012年に京都大学大学院の博士課程に入学。インターネット基盤技術の研究に取り組み、mod_mrubyやngx_mrubyなどのOSSを始めとした多数のOSSへの貢献や学術的成果を修める。2015年4月より2018年10月までGMOペパボ株式会社にてチーフエンジニアとしてプロダクトのアーキテクトやエンジニア組織のマネージメントに従事すると同時に、ペパボ研究所では主席研究員としてOS・Middleware・HTTPを研究。2018年11月より現職。
第9回日本OSS奨励賞や2014年度情報処理学会山下記念研究賞などを受賞。2016年には、情報処理学会IPSJ-ONEにおいて時流に乗る日本の若手トップ研究者19名に選出される。

 

参考情報

「IEEE COMPSAC 2020」について

「IEEE COMPSAC」は、IEEE内に設置されているテクニカルソサイエティ「IEEE Computer Society」による、コンピューターソフトウェア分野の主要な国際会議です。「COMPSAC 2020」(The 44th IEEE Computer Society Signature Conference on Computers, Software, and Applications)は、「Driving Intelligent Transformation of the Digital World(デジタル世界のインテリジェント・トランスフォーメーションを推進する)」をテーマとしています。

「AIOT 2020」について

「IEEE COMPSAC 2020」に伴って開催される「AIOT 2020」(The 1st IEEE International Workshop on Advanced IoT Computing)は、IoTコンピューティング領域における研究開発について発表・議論するワークショップです。

「STPSA 2020」について

「IEEE COMPSAC 2020」に伴って開催される「STPSA 2020」(The 15th IEEE International Workshop on Security, Trust & Privacy for Software Applications)は、ソフトウェアアプリケーションのセキュリティ、信頼性、プライバシーを向上するための研究開発について発表・議論するワークショップです。

さくらインターネット株式会社について

本 社:大阪府大阪市北区大深町4番 20 号
設 立:1996年12月23日
資本金:22億5,692万円
売上高:219億8百万円(2020年3月期)
URL  :https://www.sakura.ad.jp/corporate/

この件に関する報道関係者からのお問い合わせ先

さくらインターネット株式会社 広報担当
E-mail:press-ml@sakura.ad.jp

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