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さくらインターネット研究所、マテリアルズ・インフォマティクスに関する共同研究論文が国際会議「IEEE ICMLA 2023」で採択

くらインターネット株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:田中 邦裕)の組織内研究所であるさくらインターネット研究所と国立大学法人京都大学複合原子力科学研究所以下「京大複合研」が共同で行うマテリアルズ・インフォマティクス1(以下「MI」)に関する研究論文が、国際会議「IEEE ICMLA 2023」におけるメインカンファレンスに採択されました。

共同研究における双方の役割と実現する研究内容

本論文は、コンピュータグラフィックスなどの分野で広く利用されているドロネー四面体分割を結晶構造に適用する独創性と、提案手法の物性予測の性能が評価され採択にいたりました。

本共同研究は、四面体メッシュで表現した材料の結晶構造の情報と深層学習を用いて、物性を予測する新たな手法を提案しました。現在、結晶構造は2次元のグラフで表現することが主流です。しかし、結晶構造は本来3次元の情報であるため、グラフに変換することで原子位置などの3次元情報を損失します。そこで本研究では、結晶構造の情報を3次元形状の表現力が高い四面体メッシュで表現を行う手法を提案しています。

近年、これまでに積み上げられた大規模な実験データやシミュレーションデータを利用した機械学習等によって効率よく材料開発を進めるMI研究が注目されています。しかし、国際水準でMI研究を進めるには、「材料科学」と「データ科学」の両方に関する深い知識が必要です。
そのため、それぞれの専門家が在籍するさくらインターネット研究所と京大複合研が共同で本研究を実施しています。

本共同研究における、それぞれの役割は以下の通りです。

京大複合研

エネルギー材料を中心とした材料科学の知識や経験を積み上げており、それらを踏まえた新たな研究課題の定義やデータ作成・前処理の検討、得られた結果に対する考察の役割を担います。

さくらインターネット研究所

機械学習や深層学習などの知識や経験を踏まえた学習に利用するデータセットやモデルの設計・開発の役割を担います。特に本共同研究では、核燃料・原子炉材料などのMI研究が未だ発展途上であるエネルギー材料科学分野に対して世界に先駆けて国際水準の研究を展開していくことを目指しています。

 

なお、本論文の発表をアメリカ合衆国フロリダ州で、現地時間2023年12月15日(金)~17日(日)に行う予定です。

今後もさくらインターネット研究所は、「『やりたいこと』を『できる』に変える」の理念のもと、今後も社会にとって有用で新しいインターネットインフラを実現するための研究開発に努めてまいります。

採択された論文について

タイトル

DeepCrysTet: A Deep Learning Approach Using Tetrahedral Mesh for Predicting Properties of Crystalline Materials
Hirofumi Tsuruta (SAKURA internet Inc.), Yukari Katsura (NIMS, The University of Tokyo, RIKEN), Masaya Kumagai (SAKURA internet Inc., RIKEN, Kyoto University)

(和訳)
DeepCrysTet:結晶材料の物性予測のための四面体メッシュを用いた深層学習アプローチ
鶴田博文(さくらインターネット株式会社)、桂ゆかり(物質・材料研究機構、東京大学、理化学研究所)、熊谷将也(さくらインターネット株式会社、理化学研究所、京都大学)

概要

新規材料の研究開発の効率化を目的として、深層学習を用いて材料物性を予測する研究が盛んに行われています。金属やセラミックなどの無機材料は、材料内部の結晶構造が物性に大きく影響を与えることが知られているため、これまでに材料の結晶構造の情報を活用して物性予測を行う深層学習モデルが提案されています。この際、結晶構造の情報をどのように特徴量に変換し、深層学習モデルに入力するかが非常に重要となります。現在、結晶構造は2次元のグラフで表現することが主流であり、代表的な先行手法であるCrystal Graph Convolutional Neural Networks(CGCNN)は、様々な物性において非常に高い予測精度を実現しています。
しかし、結晶構造は本来3次元の情報であるため、グラフに変換することで原子位置などの3次元情報を損失します。そこで本研究では、四面体メッシュで表現した材料の結晶構造の情報と深層学習を用いて、物性を予測する新たな手法を提案しました。メッシュは3次元形状の表現力が高いため、コンピュータビジョンなどの分野で広く利用されています。
本研究の提案手法は、四面体メッシュという結晶構造データの表現方法の独自性だけでなく、一部の物性予測においてCGCNNと同等以上の精度を実現しています。

論文

以下のウェブサイトをご参照ください。
https://arxiv.org/abs/2310.06852

論文の発表について

2023年12月15日(金)~17日(日)にアメリカ合衆国フロリダ州で開催される「IEEE ICMLA 2023」にて、論文発表をいたします。

日程・場所

日程2023年12月15日(金)~17日(日)
場所:アメリカ合衆国フロリダ州  HYATT REGENCY JACKSONVILLE RIVERFRONT

登壇者

さくらインターネット研究所 研究員 鶴田博文

詳細

詳細につきましては、下記をご参照ください。
https://www.icmla-conference.org/icmla23/index.php

さくらインターネットの本共同研究者紹介

鶴田 博文(さくらインターネット研究所研究員)

材料科学や創薬分野における機械学習・人工知能技術の活用に関する研究を担当。学生時代は材料工学を専攻し、高分子材料の物性に関する研究に従事。2012年9月に修士課程を早期修了。2016年11月にIT業界に飛び込み、機械学習エンジニア、インフラエンジニアを経て、2019年8月より現職。

熊谷 将也(さくらインターネット研究所研究員、京大複合研特定助教、理化学研究所客員研究員)

材料科学と情報科学が融合したマテリアルズ・インフォマティクス研究を担当。また、研究を実社会につなげるプロダクト開発にも従事。2017年 大阪大学工学研究科博士後期課程修了。自身が開発した無機材料分野の大規模な実験値データベースが評価され、2019年に国内外の学会で優秀ポスター賞を受賞。2020年4月より、クロスアポイントメント制度を利用して京都大学の特定助教に就任。

参考情報

IEEE ICMLA 2023」について

IEEE ICMLA」は、Association for Machine Learning and Applications (AMLA)が複数の大学と連携して毎年開催している機械学習の応用に重点を置いた国際会議です。本会議では、幅広い分野の課題解決のための機械学習技術や、機械学習に関連した学際的な研究についての論文投稿が推奨されています。

さくらインターネット研究所の社員が、京都大学特定助教に就任(2020年5月28日発表)

https://www.sakura.ad.jp/corporate/information/newsreleases/2020/05/28/1968203936/

 

 

※1 情報科学における機械学習をはじめとしたさまざまな技術を活用し、材料科学における新規材料探索や材料設計および開発の効率化を進めることを目的とした研究領域。
※本内容は発表時点の情報です。その後、予告せず変更となる場合があります。
※記載されている会社名、製品名は、各社の商標、もしくは登録商標です。

さくらインターネット株式会社について

代表者:代表取締役社長 田中 邦裕
本 社:大阪府大阪市北区梅田 1 丁目 12 番 12 号
創 業:1996年12月23日
設 立:1999年8月17日
URL :https://www.sakura.ad.jp/corporate/

この件に関する報道関係者からのお問い合わせ先

さくらインターネット株式会社 広報担当
問い合わせフォーム:https://sakura.f-form.com/sakurapr