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【イベント】「チームのクリエイティビティを高める心理的安全性」とは?代表田中が登壇

2019年6月7日

2019年2月28日(木)、さくらインターネット大阪本社にて「クリエイティビティを高めるための心理的安全性とデータ活用」と題したイベントが開催されました。主催は、コンサルティングや科学的なデータ分析で企業のHR領域を支援する株式会社All Personalセミナー運営事務局です。

「心理的安全性」とは、Google社が発表した「チームを成功へと導く5つの鍵」のうちのひとつ。「チームメンバーが安心してリスクを取ることができ、お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができること」を指します。Google社は、この心理的安全性こそがその他の4つの鍵を支える土台であり、生産性を高めると発表しました。

ちなみに、その他の4つの鍵は、「相互信頼」(チームメンバーが高いクオリティで仕事を時間内に仕上げてくれると信じていること)、「構造と明確さ」(チームの役割、計画、目標が明確になっていること)、「仕事の意味」(仕事が自分にとって意味があると感じていること)、「インパクト」(自分の仕事には意義があり、良い変化を生むものだと思っていること)で構成されています。 

出典:Google「効果的なチームとは何か」を知る

https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

今回は、さくらインターネット代表取締役 田中の「『さくら流ご機嫌な組織』働きがいと心理的安全性が大切なワケ」の講演内容を抜粋しつつ、イベントの様子をお届けします。

働きやすさが高まったことで、売上や社員紹介経由の入社が増えた

そもそも、さくらインターネットが「社員の働き方をより良く変えよう」とアプローチを開始したのは、2014年。きっかけは、田中が「公益資本主義」というキーワードを知ったことでした。公益資本主義とは、資本主義の中にありながらも、社会にとって有用な企業を生み出す流れを起こしていくことです。

「仕事は、利益を出すためだけ、株主のためだけのものではない。長い目で見て、社員・お客さま・地域社会など全方位にとって良い経営をしないといけない。」と、そのように考え方が変わった、と田中は話します。

イベントの様子(スクリーン左:さくらインターネット 代表取締役 田中 邦裕、スクリーン右:All Personal 代表取締役CEO 堀尾 司様)

田中:「社員にとって良い経営って何だろうと見つめ直す中で『働きやすさと働きがい』というキーワードについて考え始めました。気付いたのは、働きやすさと働きがいに関わる要素はそれぞれ別であること。たとえば、『雇用が安定してる』や『休みが取れる』は働きやすさの要素で、『成長できる』『チャレンジできる』などは働きがいの要素だということです。」

そして、田中は「さくらインターネットでは、まず働きやすさを高めていこう」と決めます。なぜなら、働きやすさと働きがいをマズローの欲求5段階説の中に当てはめたとき、低位に当たるのが働きやすさに関連する要素で、高位に当たるのが働きがいに関連する要素であるから。「安全な欲求などの低位な欲求が満たされていない状態で、自己実現などの高位な欲求は満たされづらいだろう」と思ったためでした。

こうした背景から2016年に導入したのが、多様な働き方を支える「さぶりこ」制度(Sakura Business and Life Co-Creation)です。具体的には、下記のような施策を行っています。

https://www.sakura.ad.jp/corporate/corp/sabulico/

田中:「意識しているのは、たとえば育児中の社員だけ・介護中の社員だけなど、特定の条件に該当する人に向けた施策を用意するのではなく、誰もがリモートワーク可能/誰もが有給休暇を取りやすい、といった状況を作ること。そうすれば、結果的に全社員が働きやすく制度を使いやすい風土が創られる。そして、それぞれの施策のベースには『社員への信頼』と『性善説』があります。」

施策実施の甲斐あって、2017年度は2013年度と比べて「売上2倍、東証一部上場、社員数倍増」といった成果が出ました。また、人事系のアワードで取り組みを評価していただいたり、入社する社員の半数近くが社員紹介経由になるなど採用もスムーズに進んでいます。

働きやすさが高まっても、働きがいは変わらなかった

しかし、良い結果ばかりではありません。というのも、社員の「働きがい」の指標であるGPTW(Great Place to Work®)の数値は、「さぶりこ」開始当時こそ少し上がったものの、ここ数年横ばいのまま60%台で停滞しているからです。

田中:「GPTWの中でも“仲間意識”などは数値が低い。社員が一気に増えたため、社員間でのつながりの構築が追い付いておらず、職場環境における心理的安全性が低くなってしまっています。“チャレンジできる”や“周りから刺激を受ける”、“周りの人が会社に行きたいと思っている”といった項目の数値も低い状況です。90%以上の社員が『働きやすい』『この会社で長く働きたい』と感じられるほど働きやすさは上がっても、働きがいは変わりません。」

こうした状況を打開しようと、さくらインターネットは新たな取り組みを始めようとしています。それは、「もう一度、会社と社員がともに働きがいを追及する」ということ。その上で大切なキーワードが「クリエイティビティ」。社員がいかにクリエイティビティを発揮して、良いアウトプットを出せる環境を整えるかということです。

田中:「労働時間を投入すればいいものがたくさん作れるという時代は終わり、クリエイティビティをどれだけ発揮できるかによってアウトプットの質が大きく変わるようになった。『働きやすさ』を高めるための施策は労働量の緩和・調整に働きかけるアプローチでしたが、これからは、いかに社員のクリエイティビティを高めるかを考える、働きがいへのアプローチをしなければなりません。」

そして、クリエイティビティを高めるために大事になるのが、今回のイベントテーマでもある「心理的安全性」です。

田中:「心理的安全性とは、所属しているチーム内で気兼ねなく発言でき、自分らしく働けること。いわばベースキャンプのようなものです。部署や企業内の心理的安全性が高ければ、安心して高い目標にチャレンジできます。」

インターネット的”になった組織の心理的安全性を高める

心理的安全性を高めるために、さくらインターネットは下記のような施策を始めています。

・1on1
・ハブになる人材の採用
・食事会
・社員に求める行動やマインドの明確化

施策のヒントは、インターネットから得たもの。「インターネットのしくみと、今の時代の会社組織は非常に似ている」のだと田中は話します。

田中:「たとえば電話番号は、市外局番などのルールに乗っ取って割り振られるトップダウン的なものでした。一方、インターネットは自らIPアドレスを取得できるボトムアップ的なもの。今では、社会や組織の構造・人間関係も“インターネット的”に変わっています。ヒエラルキーが崩壊し、距離や人種を越えてフラットな横の繋がりが築けるようになってきました。」

こうした背景から、メンバーには自分の意見を伝えてもらえる機会としてフラットな1on1(上長と1対1で話すミーティング)の場を用意したり、部署内の上司・部下以外との関係性も育んでもらえるように食事会を企画したりしているのです。また、企業においても個人の自由度が増す中で、大切にしなければならないことがある、と田中は続けます。

田中:「インターネット通信は、プロバイダがまとめ役となって通信を成立させている。それに倣って、当社でもハブとなる人材の採用を進めています。また、インターネットにはプロトコルというルールがあります。これを守るから、世界中の人は自由に通信できている。つまり、企業は多様性を認め合いながらも、共通するプロトコルは持たなければならない。社是やコーポレートスローガンはもちろんのこと、さらにブレイクダウンして『このような取り組み・姿勢を評価します』と示す、行動・マインドの指標を明確にしていく必要があります。」

最後に、田中は“企業が意識してほしい2つのこと”としてメッセージを伝え、講演を締めくくりました。

田中:「利益を上げるために手軽にできるのはコストダウン。けれど、それでは新しいものが生まれません。効率性を追求するよりも、クリエイティビティを向上させて売上を上げることに知恵を使うべき。もうひとつは、企業は社員を信頼し、社員は自身の能力を高める努力をすること。そのために、企業は各社員が力を発揮できる場所を作ってあげないといけないし、社員も自分のクリエイティビティを最大限に発揮することが必要だと思います。」

働き方改革はまずトップ・経営陣が変わることから

イベントの最後には、参加者から田中にいくつか質問を頂きました。その内容の一部を紹介します。

質問:「働きやすさ」を追求した仕組み・ルールづくりを進めると、さぼってしまう人も出てくるのではないかと思います。どのように社員を信じればいいですか。

回答:信じると決めましょう。ただ、多くの人がいる組織だと、どうしてもさぼる人は出てくると思うので、「不正はしないなどのルールは絶対に守ってください」ということは伝えます。そして、もうひとつすべきは数字的アプローチ。生産性を測ることは難しいので、当社は今後「それぞれの社員が、いかに周りに対してポジティブなインパクトを与えられたかどうか」を可視化しようと考えています。仕事の成果やプロセスももちろん大事ですが、周りの人が「この人と仕事してよかった」と思ってもらえたり、お客さまに満足していただくことが大事だと思うので。

質問:働きやすさや働きがいを上げるためのさまざまな取り組みについて、アイデアとして思い付いても、中間管理職の者がネガティブな反応を示すことで運用がうまくいかないことがあります。最近導入したフレックスタイム制も、部署によっては機能していません。さくらインターネットではそういった課題はありましたか?どう解決しましたか?

回答:解決策は2つです。ひとつは、トップがまず取り組むこと。私は創業当時は徹夜で働いていましたが、今は「徹夜せずに機嫌良く仕事をしていれば、もっと早くに事業が軌道に乗っていたのでは」と思います。だから、働きやすさを高める施策に対して腹落ちして自らどんどん制度を使う。そして、その姿を見た役員たちも真似して積極的に有給消化などをしているので、社員全員が制度を使えるようになってきました。

もうひとつは、方針に従わない管理職を役職から外すこと。とはいえ、さくらインターネットも「さぶりこ」への取り組みを始めるまでは、こうした施策の大切さを、私含めた経営幹部陣がまったく理解していませんでした。けれど、人事部主導で企画した『働き方を考えるワークショップ』への参加を促され話し合う中で、「働きやすさって大事だよね」「社員を信頼した方がいいし、性善説の仕組みにしたいね」ということになったのです。働き方改革はボトムアップではできない。まず、社長と役員が変わって、それからトップダウンで進めていくのが一番いいですね。

今回のイベントでは当社の経験や今の取り組みを話す機会をいただいたものの、まだまだ当社も成功と失敗を繰り返しながら模索している最中です。参加いただいた皆さまとともに、働きがい向上への新たなチャレンジをしていきたいと思います。

※ Googleは、 Google Inc. の商標です。

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