【イベント】小学校プログラミング教育を考える夕べ@大阪 ~学校・地域・企業で一緒に取り組むために~

2019年9月24日

 2019年7月19日に『第4回 小学校プログラミング教育を考える夕べ @大阪 ~学校・地域・企業で一緒に取り組むために~』というイベントを開催しました。さくらインターネット さくらの学校支援プロジェクト プロデューサーの前佛雅人と、ビジュアルプログラミングアプリ「Springin’」(スプリンギン)を開発している株式会社しくみデザインの中村俊介 氏が登壇しました。本記事ではその様子をお伝えします。

小学校におけるプログラミング教育とは?

はじめに前佛から、「小学校段階でのプログラミング『で』教育するとはどういうことなのか」「さくらインターネットの北海道石狩市での取り組み」についての情報共有を行いました。

「プログラミング教育はいろいろな誤解を受けている。このセッションでは小学校段階でのプログラミング『で』教育するとはどういうことなのか」ということについての共通認識を持ちたいとし、プログラミング教育はプログラミング言語を教える「コーディング教育」ではなく、いろいろな人と協力してプロジェクトをすすめていくこと、ひとりではできないことを協力して進めていくこと、誰もがITを使っていろいろな社会問題を解決していくこと、答えがないさまざまな課題を解決する力を育むものであると話しました。 また、プログラミング教育についてはさまざまな議論が行われていますが、「議論のための共通認識がないため堂々巡りになっている。やるべきかどうかの話はもう終わっていて、やると決まっていることに対してどうしていくかという視点が必要」と指摘しました。 そして、小学校におけるプログラミング教育は「プログラミング体験」、プロを育成するのではなく体験を通じて深い学びにつなげていくものであり、「小学校では農業体験として米作りを行うことがあるが、誰もが米農家になるためにするものではないし、体育の授業も皆がオリンピック選手になることを目的とはしていない。プログラミング教育もそれと同じことだ」と例を挙げて解説しました。

さくらインターネットが北海道石狩市でおこなっている小学校プログラミング教育支援の取り組みについては、「教材を作らない、販売しない、塾の経営もしない、現場の先生方や教育委員会と一緒に、先生方が自分たちでプログラミングを取り込んだ授業ができるように支援していく活動。教育のプロである学校の先生が主体であることを重視し、学校の先生とIT企業のお互いの専門性を生かした支援を行っている」と説明しました。

楽しく「作る力」を育てるプログラミング教育

続いて、中村氏が「つくる・生み出す」といったクリエイターの視点から考えるプログラミング教育と、そのための取り組みについての紹介を行いました。

まず中村氏は「ものづくりは楽しくなるまでが大変で、多くの人がその壁を越えられず挫折してしまう。この敷居をテクノロジーを使うことで下げることができる。より多くの人がつくる楽しみを知ることができるように裾野を広げていくためにSpringin’を開発した。Springin’はプログラミング教育のために作ったツールではないが、プログラミング教育に活用できるツールになっている」と、自社開発のビジュアルプログラミングアプリ「Springin’」について説明しました。 中村氏は、実際に小学校でワークショップを行ったり、福岡県のプログラミング教育推進の委員を務めるなど、公教育におけるプログラミング教育支援にも直接関わられています。そのような視点からプレゼンテーションの中で、「先ほどのさくらの話を聞いていて『なるほどそうだよね』とうなずいていた」とコメント。プログラミング教育に対しての方向性は、さくらインターネットの取り組みと近しいものがあるようです。

プレゼンテーションの後半は会場にiPadが配られ、Springin’のハンズオンが行われました。ハンズオンでは、十数分の時間で簡単なゲームが作れるようになるところまで解説される実践的なものでした。

質疑応答タイム

その後、休憩を挟んで質疑応答タイムとなりました(以下、回答者の敬称は省略)。

[Q]コンピュータエンジニアとして学校教育へのサポートをどうすればよいか?
中村:プログラミング教育は現場の先生だけでなく、地域のエンジニアをはじめとして、さまざまな人が協力して一緒に取り組んでいくことが大事です。現状では学校の先生もどうしていいかわからない方が多いという状態なので、エンジニアからのアドバイスはありがたく思われるでしょう。校長先生と話してみると話が進むことが多いようです。
前佛:エンジニアということは特に意識する必要はなく、身の回りに困っている人がいたら情報共有しませんか?ということだと思います。

[Q]時間割がきつきつの今、どの教科のどういった単元で教えることが可能なのか?
前佛:石狩市では、総合的な学習の時間を使って「身の回りのコンピュータを探そう」といった授業を行っています。そのほかには学習指導要領に例示されている算数や理科などで実施が可能だと思います。
中村:(Springin’は)音楽の授業や、発表資料を作るのにも使われたりしています。主要5教科はもちろんですが、図工や音楽といった科目のほうが取り入れられやすいようです。

[Q]Springin’はどうやってここまで至ったのか
中村:リッチなコンテンツは絵に音がついていますよね。まずはこれを簡単に作れるようにpaintoneというアプリを作りました。そうすると今後は絵を動かしてみたくなるじゃないですか。そこでそれをコーディングではなく、思考を直感的にプログラミングできるようにしたのがSpringin’です。ただSpringin’も4回作り直しています。最初は絵を動かすことだけでしたが、動くだけだと面白くなかったんです。そこでバージョン2はいろいろできることを増やしてみたら、今度は難しくなってしまった。そこでバージョン3ではバージョン2から機能を絞り込みました。そうすると今度は制作過程での試行錯誤の余地が減って、間違いがなくなってしまったんです。試行錯誤の過程を大事にしつつも、エラーばかりが出て創作意欲を削ぐのもよくないということで、その両方の落とし所を探ったものが今リリースされているバージョン4です。

[Q](Springin’のハンズオンで)オブジェクト指向という言葉が出てきたが、一般の人にどのように説明しているのか?
中村:今回はエンジニアの方もいらっしゃるということでオブジェクト指向という言葉を使いましたが、普段はオブジェクト指向という言葉は使っていません。すべての人がプログラマーになる必要はないという前提から、小学校でのプログラミング教育で大事なのはオブジェクト指向という言葉より、その概念だと思っているからです。

[Q]コイン(Springin’で制作した作品をやりとりするためのアプリ内通貨)をなぜ実装したのか?
中村:クリエイターとしての視点から、僕は作品は作っただけでは意味がない、見てもらうことが大事だと思っています。そこで作品を見てもらって、ユーザーから認めてもらったことがわかるプラットフォームとしてこの機能をつけました。

[Q]中学校との連続性は意識しているか?
前佛:私たちのプロジェクトではとても意識しています。小学校だけで終わるのではなく、小中高の体系だった仕組みが必要だと考えています。

[Q]Springin’はiPadのアプリですが、小学校・中学校ではWindowsのシェアが非常に大きく、Windows版アプリやクラウドベースでの提供も考えてほしい。
中村:これはよくいただくご意見です(笑)。我々がiPadを環境として選択したのは、作る気持ちよさを最もよく体現できるのがiPadだったからです。WindowsやAndroid、そしてウェブへの対応は、いつとはまだお答えできないのですが、検討は進めています。

まとめ

さくらインターネットでは「小学校プログラミング教育を考える夕べ」と題したイベントを続けてきて、今回が4回目になります。これまではエンジニア向けのものもあったり、教育関係者向けのものもあったりと、必ずしも一様のイベントではなかったわけですが、今回は保護者・エンジニア・教育関係者がバランス良く来場されており、今までにない情報交換が行えたイベントだったのではないかと思います。また開催場所の大阪のほかにも兵庫県や岡山県から参加された方もいるなど、大阪という土地が地域のハブになっていることを強く実感したイベントでもありました。さくらインターネットでは、今後もより多くの人にプログラミング教育のリアルを知っていただくためのイベントを開催していきます。引き続きよろしくお願いいたします!

取材・執筆 さくらインターネット株式会社 さくらの学校支援プロジェクト広報担当 大喜多 利哉

参考情報

・さくらのプログラミング教育ポータル https://prog-edu.sakura.ad.jp/
・さくらの学校支援プロジェクトTwitter https://twitter.com/sakuraprogedu
・CSR活動「次世代育成支援」 https://www.sakura.ad.jp/csr/next-generation/

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