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生徒は社員、講師も社員。多様な背景の社員が支える「さくらの寺子屋プロジェクト」

社員同士で教え合う――それはどの会社でも見られる光景かもしれません。しかし、教える側の社員が半年かけて講師の資格を取り、勉強会を開く企業はそう多くないのではないでしょうか? 今回は「さくらの寺子屋プロジェクト」と銘打ち、社員を講師として起用する、さくらインターネットの取り組みについてご紹介します。

社内研修の講師になるために、半年間の“修行”が必要!?

▲社員が社員に教える社内研修プログラム、「さくらの寺子屋」のひとコマ

社内研修といえば、外部から専門の講師を招いて行うのが一般的。しかし、さくらインターネットが行う「さくらの寺子屋プロジェクト」(以下、寺子屋)は少し違っています。寺子屋は、さくらインターネットの社員が講師となり、ほかの社員を教える勉強会なのです。

これは、関係する社員や組織にとって3つの成長につながるものとなります。ひとつは”教える”ことによる「講師側社員の成長」。ふたつめは”教わる”ことによる「参加側社員の成長」。そして最後は、”相互に成長を促進する”風土の醸成による、「組織の成長」です。

寺子屋の講師は次のような段階を経て資格を習得し、勉強会に臨みます。

まず、社内で登壇する講師が募集されると、その役割を担いたいという社員が、自分のプロフィールやカリキュラム案、何回登壇できるか、遠方の拠点にも出張できるかなどを記載したエントリーシートを提出して立候補。社内審査を経て、講師としてふさわしいと判断された人が選ばれます。
選ばれるとすぐに、登壇するための準備がはじまります。準備の内容は、講師養成講座での研修と資料作り。講師としてふさわしい技量を身につけるため、半年という長い期間をかけて、社外の専門家による講師育成研修を受けるのです。
研修には、研修作成プロセスの学習、作成したカリキュラムのレビュー、ファシリテーションレビューやビデオフィードバックなど、かなり踏み込んだ内容が含まれます。そうして最終的な判定を受け、ようやく講師として認定されます。

寺子屋で行われるカリキュラムは多岐にわたり、大きなジャンルとして「テクニカルスキル」と「ビジネススキル」のふたつがあります。テクニカルスキルには、ネットワークやサーバーなど技術的な基礎知識、そして「さくらのクラウド」などの自社製品に関係するものが。一方ビジネススキルには、電話対応力、コミュニケーション術、契約書の書き方、財務3表の見方などがあり、それぞれの講師の持ち味・得意分野を活かしたものとなっています。

このようにあえて外部から講師を招くことをせず、社員が社員を教える方法を取るようになったのには、ある理由がありました。

一律の研修では限界がある。多様な背景を持つ社員のためのプログラム

▲入社して間もなく、プロジェクトの中心メンバーとなった人事部の金山早希

さくらインターネットでは、さまざまなバックグラウンドの人たちが働いています。2017年現在、中途入社の社員が全体の9割近くを占めており、18歳で入社してきた人や、60歳を超える社員もいます。
当然のことながら、これまで得てきた経験や知識、スキルも社員によってさまざまです。それぞれ足りないところは別の社員が補い合うだけではなく、教え合えればいいのでは――? そうした発想のもと、寺子屋プロジエクトがはじまりました。

その任務を託されたのが、2015年5月に中途入社した人事部・金山早希です。
金山は前職で、研修開発や人材開発コンサルティングを担当。いわば研修のプロフェッショナルです。

金山 「新卒の社員が多ければ、3カ月研修や3年目研修などを一律で実施することができます。しかし当社では、中途入社の社員が多いうえ、その背景もさまざま。そのため、研修対象者を“ここからここまで”と勤続年数などで切り分けるのが難しい。 それに、これまで知識や経験を積んできたとしても、会社が違えば活用方法も違います。そもそも、どういった研修が求められているのか、一概に定義することが難しいという課題が長年議論されてきました」

それならば、実際に社内で活躍している人に聞いたほうが早く、確実に業務に役立つ情報が得られるのではないか? しかもさくらインターネットには、外部研修やイベントで登壇するような人材も多くいたため、社内向け研修もできるのではないかと考えたのです。

また、社員を講師とすることにはメリットもあると考えました。社内講師であれば、外部から講師を招いた場合に比べ、さまざまなテーマへの柔軟な対応やシリーズ化がかないます。さらに、社員自身が教える役に挑戦することで、本人にとっても新たな成長へとつながります。

しかし、実施に先立って行なった社内アンケートでは、必ずしも賛成意見ばかりではありませんでした。

金山 「当初は、部署によって必要なもの、求めているものが違うのだから、研修を開催したところで参加者が限定されてしまうのではないか。 全体が満足するものを創るのは難しいのでは。通常の自主勉強会と何が違うのか……など、さまざまな意見がありました。 さらに、講師を務めた実績が直接的な評価につながるわけではなく、むしろ自分の時間を削って準備する必要があったため『講師のなり手が出てくるのだろうか』という懸念もありました。 そのような意見を目にして、これから私たちがしようとしていることが、本当の解決策になるのだろうかと心配もあったんです」

会社の主役となるサービスだからこそ、知識を共有する場が必要

▲第1期の講師に自ら手を挙げた、セールスマーケティング本部の松田貴志(写真右)

一方では厳しい意見だけでなく、アンケートを通して、これまで見えてこなかった社員の人材育成に対するニーズを明確化することができました。
自社サービスについてもっと学びたい、ITのトレンドや経営の知識、法律関係について知りたい、という声も、社員から多く寄せられていたのです。
中には、ほかの部署の仕事への理解を深めるため、業務内容を教えてほしいというものも。これは、講師が社員だという前提だからこそ出てきた意見でした。

金山 「実際、同様の研修を実施している大手企業の事例があり、それがきちんと機能していることを知りました。それならわたしたちの会社でもできるのではないか、と考えるようになったんです。 また代表の田中邦裕からも、寺子屋が『お互いに信頼し合って実現できる場所』であることや、それぞれの成長へと導くものであることなどが説明されたことで、前進へのはずみがつきました」

金山が入社してから4カ月後の2015年9月、いよいよ「さくらの寺子屋プロジェクト」の講師の募集がはじまりました。

第1期の講師である13人のひとり、セールスマーケティング本部・松田貴志は2015年4月の中途入社組。実はずっと、社内のナレッジ共有などの状況にもどかしさを感じていました。

松田 「私たちが提供しているサービスの主役はサーバーです。ところが、社員であっても、直接かかわりのあるエンジニア以外ではサーバーについての知識が十分ではない人もいました。サーバーについて知ってもらいたいと思っても、他部署だとなかなか話す機会もなくて」

一部ではもちろん社内研修が行われていましたが、それは「閉じられたもの」。

松田 「たとえばある部署で行われている研修は、その部署だけのものなので、他の部署の社員はやっていることすら知りません。またプログラマーたちがやっている勉強会のようなものは、ハードルが高くてエンジニアでない社員はいきなり参加しづらい。もっと気軽に受けられるような勉強会があればいいのに、と常々感じていたんです。 そんなときに、寺子屋の話が出てきて。サーバーの初心者向け講座をやりたいと考えていたので、この機会に乗じてみることにしました」

松田のような熱意のある候補者が講師としての資格を得た2016年4月、ついに寺子屋のカリキュラムがはじまりました。

当初こそさまざまな危惧があったものの、参加募集開始から2日で100件以上の受講申し込みがありました。定員オーバーとなる講座もあり、その後も追加開催を重ね、開始から1年間で20回以上の講座を実施。「続編を期待!」「他部署の仕事を理解できた」など、「さくらの寺子屋プロジェクト」は高い評価を得ることができました。

「次はあなたが寺子屋の講師に」少しずつ生まれはじめた好循環

▲さらなる浸透に向けて、プログラムのブラッシュアップは続く

講師役を務めた松田は、講師になるために受けた外部研修や講師としての登壇経験から、自分がかけた労力以上の恩恵を得ることができたと感じています。

松田 「自分が人前に出てプレゼンテーションしているとき、どんなふうにしているのか客観的に見る機会って、まずないですよね。でも今回の研修の中で、行った模擬講義のフィードバックがあったんです。自分の話し方の癖や話しているときの姿勢がどのようなものかわかったので、気をつけることができるようになりました。 また、教材として使うプレゼン資料の作り方についても学びがありました。たとえば、文字を多くしすぎると、受講者の注意がスライドの文字を読むことにそれてしまい、講師の話に耳を傾けられなくなるなど。資料をレビュー、ブラッシュアップしてもらい、とても勉強になりました。 これにより、何が自分に足りないのかも見えてきたんです。後の仕事にも活かせる貴重な体験になったと思っています」

講師だけでなく、受講者も知識以外のものを得ることができました。

金山 「これまで、社内でも異なる部署間での交流はあまり見られませんでした。でも、寺子屋を受講した人たちの中で『このジャンルについてわからなかったら、あの部署の誰に聞けばいい』という新しいネットワークが生まれはじめたんです。 受講者の中にはそのとき教わった講師に憧れて、次は自分が教えたい、と次年度の寺子屋講師に応募してきた人もいます。これは大きな成長です。 また、たとえばオフィスや懇親会の場で、誰かが得意なことを披露したとき、『それ今度寺子屋でやってほしい!』なんていう会話が自然に生まれるようになりました。すっかり社内の基本用語として定着しているんだな、とうれしく思っています」

さくらの寺子屋プロジェクトは、まだはじまったばかり。1年目を終え、これからの課題も見えてきました。

金山 「寺子屋はお互いの信頼関係、成長意欲で行われるもの。そのため、当日の設営から設備の調整など、受講者にも主体的な協力が求められます。受講生として参画するうち、今度は自分が講師になりたい、という人が自然に生まれてくれればうれしいですね。 また、部活動のように人事が介さず自発的に動ける仕組みになっていけたら、社員全員の成長に、さらに大きな影響を与えるものになるんじゃないかと思っています」

回を重ねていくごとに、お互いに成長を促し、いつかは「社員一人ひとりが自分の寺子屋を持つ」ようになってほしい――さくらインターネットではそうした目標をかかげ、これからも社員や組織が成長できる環境を整えていきます。

※転載元:PR Table https://www.pr-table.com/sakura-ad/stories/692
※内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。